院長からひとこと~健康の価値観

もともと歯がないこと・歯がなくなること自体は、古今東西、病とはみなされないので、健康保険には歯を残す治療内容はありません。

また、従来型の治療、とくに入れ歯では、自分の歯の方がどんどん傷んで減ってしまうわけですが、また大きな新しい入れ歯を入れておけば別に構わないだろう、というのが行政の考えです。

しかし、入れ歯の方々のお話を伺うにつけ、あまりの悲惨さにいつも胸が痛みます。

インプラントのお見積は、通常、上の人工の歯の部分までのトータルで出てきます。「こんなに高いのか!」物の値段を見慣れない方は、かならずおっしゃいます。

しかし、考えてみてください。

以前、花粉症やアレルギーに悩むある患者様が、それらの長年の悩みが一掃されたとおっしゃっていたことがありました。お話を伺うと、どうもご自宅の水道の元栓のところにセントラル浄水器を取り付けたとのことでした。これで、キッチンはもとより、洗濯、洗面、バスルーム、トイレに至るまで家中の水が浄化されるとのことです。

「高かったでしょう」とお伺いすると、確かに割高だけど、一生のことだから、ここは譲れなかったとのことでした。水道の元栓のところに屋外型の浄水器を取り付け、施工一式で40万くらい、交換カートリッジが年3万程度とのことで、一瞬ひるみますが、よく考えると、20年と見て年間で割ると2万、カートリッジと込みで月4160円、日額140円程度のコストと考えることもできます。

いっぽう、インプラント治療はどうでしょう?

10年持つのはほぼ常識、たとえば4本で100万円程度のお見積が出たとして、少々考えてみましょう。

最悪(最短)、保障期間の10年で割っても日額280円程度、20年持ったとしたら前掲の浄水器と同じ140円コストにしかなりません。これで、

鈎歯(バネがかかる歯)がどんどん抜けるリスクから解放

されるどころか、

取り外し式にまつわる悩みが一掃され、
自分の歯と同じかそれ以上によくかめて
周囲の歯も含めて全体でより長持ちする

と考えたら、健康を重視する方にとっては人生においてこんなに安い買い物もないのではないでしょうか。

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◆ 「今は」ちょっと気が向かないという方

通院中の方で、今、お見積が出たということは、今の現状ならその治療内容になるということです。

歯が不足している口腔内は、自覚症状がなくてもかみ合わせがずれてきたり、すき間に物がはさまるようになってむし歯が増えたり、他の歯がどんどん傷みつつあります。つまり現在進行形で状況は日々悪化しているのです。

お見積りの目先の金額に驚いて、あわてて「ちょっと考えさせてください」ということになる方も多いのですが、仮にその後治療を中断してそのままやり過ごした場合、何年か後に、ほぼ必ずさらに大きな症状の形で問題が再発します。

そのときの新しいお見積は、よくある話ですが、たいてい以前のお見積の3割り~5割増しになってしまいます。

逆説的に見えるかもしれませんが、こういうことを考えると、インプラントのお見積が出たということはつまり、原則として「今」が、治療開始に最適な時とも言えるのです。

◆ 「家族に相談」しないと、という方

そのご心配は、よく分かります。しかし今から断言しますが、よほどの富豪でもない限り、ご家族は必ず反対します。これは100%言い切ります。

理由のひとつは、いくら家族とはいえ、ご自身の体ではないからです。切実さがまったく違うのです。私のことを考えても、自分が歯科医師でなければ、家族が7桁の見積を持ってくれば私でもとりあえず反対すると思います。

理由のもうひとつは、ご家族は治療内容の意義をまったく理解していないからです。

いくらご本人が入れ歯で困っていたり、なぜそれが必要なのか、そうしないとどういうリスクがあるのか、などなどの問題点を抱えていても、お身内に歯科医師や専門家がいらっしゃれば別ですが、そうでもない限り、ご本人の抱えるお悩みや歯科的な問題点への理解に到達して評価しろという方が無理な話です。

あなたが「やりたい」と願う気持ち、説明を受けて理解した必要性や内容と、ご家族のそれはまったく違います。

ある程度の議論の前提としても、最低限、このページの部分の内容程度はご家族の方の頭の中にもしっかり入っていることが絶対に必要です。"家族会議"の際は、ぜひこのことは頭の片隅に置いておいてください。